ロ包 ロ孝
「気を付けなきゃいかんのは右腕のブツだ。もう砲身はくるんで有るから、ヘタに発砲は出来んだろうが」

 栗原は考えた。賊は見せ銃に恐れをなしているらしい。勝機を探るとすればそこだろう。宴会場の灯りがランタンになっているという事は、2人が発電機の破壊に成功した証だ。賊が話している内容から、2人はまだ発見されていないと思われる。ここで下手に動くより、状況を把握するのが先だ。

「同志、大変です! 電気が点かない訳です。発電機が壊されてます」

 やっと気付いたか。思ったより鈍い奴らだな。

「この野郎がやりやがったのか! 畜生! とっ捕まえた時に下にも降りてみるんだった!」

「でも同志。こいつをここに連れてきてから電気が消えたんですよ? 仲間が他に居るのでは?」

 やばいな。単独行動に見せるつもりだったのに……、どうするか……。

「おいお前! 起きろ!」

 賊が栗原を揺り起こす。

「あ、お? わんわ、おわえわ!」

 猿ぐつわの為にはっきり喋る事が出来ない栗原。

「なんだお前はって? こっちの方が聞きたいね!」

 そして栗原は、たった今目を覚ましたかのように暴れだす。

「ううぅぅ、よんえん! よんえん!」

「暴れるなよ、うるせえな。ションベンか?」

「ん〜おえう! おえう!」

「漏らすなよ! こんなところで! おい、トイレに連れてってやれ」

「解りました」

 これでひとまず切っ掛けは作れたな。小便をしている時にパッとさるぐつわを外すしかないか……

「両腕に一本ずつロープを結んでおけよ? おかしな動きをしたら引っ張れ」

 ……くそっ! 俺達に出し抜かれたからって、余計に用心してやがるな?


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