ロ包 ロ孝
 さるぐつわさえ取ってしまえばこっちの物になる。でも失敗したらチャンスは2度と無いだろう。賊とはいえ、こいつらは粗暴な感じがしないし、銃で脅かされている訳でもない。

ヘタに動かずに尋問されるのを待った方が得策だろう。選択肢は多いに越した事はないからな。

栗原はトイレに向かいながら考えを巡らせていた。


∴◇∴◇∴◇∴


 その時、ホテルから大分下った斜面に、里美と俺は身を隠していた。

「やっと自位置が出るようになったぞ? ……ああ、奴ら、みんな宴会場に集合している」

 見取り図を見てみると、センサーの殆どは緑色になっていた。

「これは間違いなく捕まったな」

「大丈夫かしら」

「今は平気だろう。栗原がすぐどうこうされるという段階じゃない筈だ」

 侵入者の扱いを巡って賊共が話し合いをしている為、宴会場に反応が集中しているのだろう。

そしてまた雨が一層強くなってきた。この状況は吉と出るか凶と出るか……。


───────


「どうするの? 早く助けに行かなきゃ!」

 確実に賊の考えが読めている訳ではないので、のんびりしても居られない。

しかし奴等も俺達を探して、警戒している筈だ。今迂闊に戻るのは危険過ぎる。

「栗原も今は様子を見ている所だろう。多分殺されてはいないと思うんだが。
 こぶ位は作ってるかも知らんがな」

「またそんな事言ってえ。淳だって居ても立ってもいられない癖にっ」


∴◇∴◇∴◇∴


「エックヒョンッ」

 わぁぁ、唾臭い猿ぐつわが更に唾だらけになったよ。坂本さん達、俺をネタに笑い話でもしてるんだな?

「エェェエックヒョンッ!」

 正にその時、栗原はくしゃみを連発していた。


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