ロ包 ロ孝
 投光器車両が廃ホテルの建っている斜面を真昼のように照らしている。光の届かない裏面はヘリからのサーチライトが丹念にあぶり出す。

いつしか雨も上がり、空からと陸上の人海戦術で、夜明け前迄には更に5人の賊を確保した。そして武器庫に有った拳銃8丁、自動小銃4丁、バズーガ砲2丁、手榴弾3ダース、そしてその他弾薬や諸々の刃物等も押収していた。

「もう夜も明けてきたな。後は機動隊の皆さんに任せよう」

 東の空がどんどん明るくなっていく。俺達はヘルメットを脱ぎ、カムフラージュのペイントをクレンジングしていた。

「やっとこの臭いペイントとおさらば出来るわ」

「里美。鼻の頭にまだしっかり残ってるぞ?」

「あら」

「しかし連日の夜勤は堪えたっすね」

「そんな事よりなぁ! ……まぁいい。今日は帰ってゆっくり休もう」

 休暇はまだ有る。明日はたっぷりと反省会だ。


∴◇∴◇∴◇∴


 次の日。

昼迄しっかり寝た俺達は、時間的に入浴客もまばらな温泉をのびのび満喫し、紅葉の始まった宿の周りを散策したり土産物屋を冷やかしたりしながら、ここ連日の疲れを癒した。

敢えてオペレーションの話を出さなかったのは、各自の中で咀嚼するに任せた方がいいと思ったからだ。

夕食後、宿の中に有るクラブ『カリビアン』で飲みながら昨日の反省会を始めた。

「ええっ? そうだったんすかっ?」

 栗原が捕まってからの一部始終を、順を追って掘り起こしてみた。【前】の一件を話して聞かせると、彼は目を丸くして驚いている。

「あと一歩で、お前も俺の旧友みたいになっていたんだぞ?」

 あそこで銃を向けられていなければ【列】を張る事も無く、龍は確実に栗原の口へ飛び込んだに違い無い。


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