ロ包 ロ孝
「これから業者に見積り頼んだり、始末書の文面考えたり……。
 そもそもあいつは、術の絞り方が下手くそなんすよ。どうしてあんな簡単な事が出来ないんすかねぇ……」

 苦虫を噛み潰したような顔をして、腕を組む栗原。3年の間に彼が見せた成長は著しいものが有った。

「はっはぁ……随分と偉くなったもんだな。栗原だってあの時は……」

「またその話っすか? 勘弁して下さいよぉぅ」

 栗原の失敗談も、今となっては過去の話。現在は確固たる技術と指導力で、エージェント達をまとめ上げてくれている。

全国で300人強のエージェントネットワークとなった音力は、数々の凶悪事件を制圧し、その後次々に現れた欧米型の犯罪にも対応してきた。結果日本の犯罪発生率も減少して、犯罪抑止力としての役割も果たしている。

音力は日本の警察に取っても、欠くべからざる存在に迄なっていた。

「俺が音力に入ってもう5年目になる。色々疑ってはみたけど、結局全部俺の取り越し苦労だったのかも知れないな。
 ああそうだ、栗原。今度久し振りに、三浦さんの墓参りにでも行くか?」

 新派を興して成功を収めた三浦氏は、あるオペレーションで仲間を庇い、銃弾が運悪く、口のガードされていない部分に命中して殉職した。

その際、彼は重傷を負いながらも賊を次々と倒し、仲間をことごとく窮地から救い出して絶命するという、壮絶な最期を遂げた。

その事件からエージェント達は、出来るだけ発声に影響しないよう考慮して開発されたフェイスプロテクターを装着するようになっている。


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