ロ包 ロ孝
「じゃ、残業頑張れよ!」
「うぃっス。楽勝ですよ!」
腕を振り回しながら走っていく後ろ姿を見送って、
「奴は全然変わらないな」
と部屋の奥で俺の帰り支度を整えていた里美に問い掛ける。
「そうかしら。栗原はかなり出来る男になったのよ? 淳の教育が良かったからだけどねっ」
そう言って俺に向けられる微笑みは、それこそ5年前とちっとも変わらない。温かく、柔らかく俺の心を包んで癒してくれている。
「しかし裏法もここの所、すっかり使って無いよなぁ」
「使う機会が無い方が有り難いわよ。裏は難易度高いし」
確かに、微妙な音程の操作や口腔内の状態等、普通の蠢声操躯法より遥かに技術を要するのが裏法だ。
しかるに、術を放ち誤った時のしっぺ返しはかなり手痛いものとなる。
「【玉女】は振り戻しを防ぎ切れないからな。過去に1人だけ自らの術に焼き殺されたご先祖様が居たそうだが……」
「ええっ? ああ怖い! そんなの考えたくも無いワ?」
自分の肩を抱きすくめてかぶりを振る里美。彼女は夕飯の支度が有るからと言って先に帰ろうとしている。
俺は何気なく「今日はやっておかなきゃいけない事が有るから、飯はいいよ」と言っていた。
∴◇∴◇∴◇∴
「坂本様、2名様ですね? ご利用時間はどういたしましょう。
……はい。かしこまりました。混み合っていますので……1時間程お待ち頂きますが、よろしいでしょうか?」
俺が手伝ったお陰でかなり早く仕事を切り上げる事が出来、案外早くにヴァシーラへとやって来た俺達だったが、以前と違ってすぐ中へ入れないでいた。
「うぃっス。楽勝ですよ!」
腕を振り回しながら走っていく後ろ姿を見送って、
「奴は全然変わらないな」
と部屋の奥で俺の帰り支度を整えていた里美に問い掛ける。
「そうかしら。栗原はかなり出来る男になったのよ? 淳の教育が良かったからだけどねっ」
そう言って俺に向けられる微笑みは、それこそ5年前とちっとも変わらない。温かく、柔らかく俺の心を包んで癒してくれている。
「しかし裏法もここの所、すっかり使って無いよなぁ」
「使う機会が無い方が有り難いわよ。裏は難易度高いし」
確かに、微妙な音程の操作や口腔内の状態等、普通の蠢声操躯法より遥かに技術を要するのが裏法だ。
しかるに、術を放ち誤った時のしっぺ返しはかなり手痛いものとなる。
「【玉女】は振り戻しを防ぎ切れないからな。過去に1人だけ自らの術に焼き殺されたご先祖様が居たそうだが……」
「ええっ? ああ怖い! そんなの考えたくも無いワ?」
自分の肩を抱きすくめてかぶりを振る里美。彼女は夕飯の支度が有るからと言って先に帰ろうとしている。
俺は何気なく「今日はやっておかなきゃいけない事が有るから、飯はいいよ」と言っていた。
∴◇∴◇∴◇∴
「坂本様、2名様ですね? ご利用時間はどういたしましょう。
……はい。かしこまりました。混み合っていますので……1時間程お待ち頂きますが、よろしいでしょうか?」
俺が手伝ったお陰でかなり早く仕事を切り上げる事が出来、案外早くにヴァシーラへとやって来た俺達だったが、以前と違ってすぐ中へ入れないでいた。