ロ包 ロ孝
「へぇぇ、変わりましたね。ここが混んでて入れないなんて、意外っス」

「本当だなぁ、まぁ前からすいてはいなかったけど……。あ、徳田店長はいらっしゃいますか?」

 俺達がここに足しげく通うようになってから、彼は店長として赴任して来た。その際、常連客の部屋に挨拶をしていると言い、乾き物の盛り合わせを山のように持って現れたのだ。

彼とはその時からの付き合いだ。何かにつけて色々と良くしてくれたっけ。

「申し訳ありません。徳田は2年前に退職しております。私はその後任の後藤です。ご用件なら私が承りますが」

 暫くしてやって来た、いかにも店長然とした風貌の男がそう言う。もう3年も4年も前の話だ。代わっていても不思議ではない。

「いえ、前に良くして貰っていたので挨拶をしようと思いまして」

「ええ、ちょっと待って下さい? 名簿には非常勤として残っていますね。ああそう言えば……」

「そう言えば?」

「いやいや、これはこちらの話です。ああ、徳田に連絡してみますか?」

 辞めて行った者にそこまでする事も無い。1時間待つのも面倒だったし、俺達は『ヴァシーラ』を後にした。栗原は「茄子味噌炒め、茄子味噌炒め……」といつまでもうるさかったが、いい年をしたオッサン2人が若い者に混じって待合室に押し込められているなんて、恥ずかし過ぎる。

「今日は焼き鳥でも喰って帰ろう」

 栗原のリズム感が全く無い歌を聞くのもナンだ。たまにはしっとり飲むのも悪くは無い。

彼もそろそろ身を固めて良い時期だし、嫁の当ては有るのか、ターゲットは絞れているのか、男同士の作戦会議といこう。


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