ロ包 ロ孝
「そうか。達っつぁんがそう言ってたって、良〜く里美に伝えておくよ」

 岡崎から耳打ちされ、聞き違いに気付いた渡辺が立ち上がり、忙しなく手を振って否定する。

「イヤイヤイヤッ伝えて頂かなくても結構です。いや? 伝えて貰おうかな……ああ、怖いようなわくわくするような」

 やはり渡辺は生粋のM体質らしい。


───────


「あいつら! 本当に全力で喰いやがったな?」

 遠慮するなと皆には言ったものの、提示された支払明細を見て俺は軽く身震いした。サラリーマンとしての身入りだけだったら、笑っていられない金額がそこに打ち出されていたからだ。

「二次会行きましょうよ。たまには可愛いお姉ちゃんがいる店でもどうです?」

「お前らなぁ……ヨオシッ、じゃあひとつ、ぱぁっと行くかっ!」

「そうこなくっちゃ!」「大統領!」「大ファウンダー」

「だからファウンダーはやめろって言ってるだろ、達っつぁん!」

「すんまっしぇぇ〜ん」

 こうなったらヤケだ。俺もとことんまで楽しんでやれ。


∴◇∴◇∴◇∴


「ちょっとぉ。淳、嫌ねえ。まぁだお酒臭いわよ? ホラいい加減起きたらぁ?」

「ん? ああ、え? 里美?」

 どこをどう帰って来たのか、久し振りに飲んだ酒はすっかり俺の記憶を消し去っていた。

「帰って来るなり玄関で眠っちゃうんだもん。普段は外でお酒なんか飲まない癖に……余程楽しかったのね」

「あ、ああ。里美もたまには来ればいいんだよ。みんな会いたがってたぞ?」

「ふふふ。みんな相変わらず? 最近は噂でしか聞けないものねぇ」


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