ロ包 ロ孝
 里美は俺の補佐的役割と、術を細かく制御する技術指導の担当をしていて、現在は現場と関係する事が殆ど無いと言っていい。

「もうお昼になっちゃったけど、三浦さんのお墓参りはまた今度にするの?」

 目覚めの茶漬けを食卓に用意しながら里美は言う。

 そうだった。今日は丁度午前中が休みだし、普段はなかなか時間が作れないから絶対行こうと思っていたのだ。

思い立った時にでも行かなければ、またいつ機会に恵まれるか解らない。

「いや、行くよ。里美も支度しておいてくれ」

「はぁい解りました。じゃあちょっと、お線香とか買って来るわね?」

 そそくさと突っ掛けを履いて玄関を出て行く里美の後ろ姿を見送りながら、俺は何とも言い難い気分になっていた。

「なんだろう、胸やけかな。薬でも飲んでおくか」

 それは背中を駆け巡る、締め付けられるような焼けるような、居ても立ってもいられない焦燥感だ。それとも痛みなのだろうか。俺はその感覚を掻き消すように熱い茶漬けをすすり、胃薬を放り込んだ。

「久し振りに、しかも記憶が無くなる程飲んだ酒で、二日酔いにならなかっただけでも拾いもんだよ」

 俺はそう呟きながら洋服タンスの扉を開け、奥の奥に有った礼服を引っ張り出していた。


───────


「ただいまぁ。お花もいいのが有ったわよ? ……って何っ? この惨状はっ!」

「いや……その……ネクタイとかカフスボタンとか礼装用のYシャツとかがさ……」

「解らないんだったら最初から任せればいいでしょっ? ホントに男って駄目ねっ!」

「申し訳ない」


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