ロ包 ロ孝
 そして俺は一番知りたかった事を質問した。

「里美。一体いつからだ?」

 里美は一点を見詰めたまま、口だけを動かして返答する。

「いつからって何がよ」

「お前が音力の手先になった時期だよ」

 暫らく何かを考えていた里美だったが、観念したのかこちらに向き直ると言い放った。

「あたしが音力の手先? 残念ながら違うわね。音力こそがあたしの手足なんだから!」

 想像していた以上の告白に度肝を抜かれた俺は、狼狽(ウロタ)えながらも続けた。

「ど、どういう事だ里美! 音力とは一体何なんだ?」

「どうやら尋問されるのは栗原じゃ無かったみたいね。
 根岸はあたしの有能なる部下よ? 少しセンスは悪いけど! あははは」

 いつものようにコロコロと笑い出す里美。表情は普段と変わらないが、背後に立ち上ぼるオーラが黒く渦巻いて見えた気がした。

「あたしは政府側の適合者だった。淳と音力に行った頃は、もうとっくに【九声】、つまり【在】迄修得済みだったのよ? 千葉も岩沢も無駄死にだったわね。
 あたしが【十声】を試す訳にはいかなかったから」

 里美の言葉は俺に火を点けた。全身の血はあわ立ち、噴怒で自制が効かなくなりそうになる。

「かっ、垣貫もか! 彼もお前の身代わりになって死んだと言うのかっ!」

「それは違うわ、淳。
 彼の死は全くの計算外だった。あそこ迄忙しい人だとは認識していなかったの。
 結果こちら側に懐柔する間も無く、彼は死んでしまったのよ」

「じゃあ北田は! あいつも全部知っていたのか?」


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