ロ包 ロ孝
 その秘術を自らの武器として現代に蘇らせようとした彼らは、高倉の血を引く者を調べ上げ、祖父の存命を確かめる。その時には既に俺の存在も浮上していたという。

そして里美は俺と同じ会社に入り、俺を調査・観察するようになる。病弱を装っていたのは、病欠の振りをして工作員としての時間を作る為だったのだ。

彼らは同じく工作員だった北田を使って蠢声操躯法の古文書を入手し、修練のシステムを構築。政府内で素質を有する人間を探し始める。

秘密が外部に漏れないようにと、諜報機関に所属する工作員から無作為に選出されたグループが修練を開始した。

しかし結果は全く思わしくなかった。最初のグループには素質を有する者(=適格者)が居なかったのだ。

ある程度長い期間が必要となる修練を数名毎のグループだけで行っていたのでは、適格者を発見する効率が悪いという結論から、案件を有していない工作員を軒並み召集し、政府やシンクタンクの内部からも希望者を募って修練を始めた。

その結果、里美はメキメキと頭角を表し、すぐさま素質の壁である【闘】【者】を次々に乗り越えた。当時政府内で行われた修練で、素質を認められたのは里美の他に1名だけ。

そのもうひとりは高齢の上、足が不自由で車椅子生活を送っていた事から、プロジェクト『パワー・オブ・ヴォイス』実動部隊の最高責任者には里美が抜擢された。

政府部内からの適合者選出を諦めた彼らは、自己啓発サークル『波動共振研究所』(現在の音力)を立ち上げ、一般からの適格者獲得に乗り出した。


< 319 / 403 >

この作品をシェア

pagetop