ロ包 ロ孝
 この術はあくまでも身を守る為に使われるべきで、攻撃の道具にしてはならないのだ。

「そう言うと思っていたわ? だから今迄黙っていたのよ。だけど淳。
 この3、4年で彼の国は着々と日本を攻撃する準備を整えているわ?」

 里美の話に依るとその秘密機関は、『パワー・オブ・ザ・ヴォイス』以前にも、有用な戦力を得る為に幾つかのプロジェクトを立ち上げていた。

遺伝子組換え技術で知能を高めた生物を武器にするプロジェクト『パワー・オブ・ザ・GMO(Genetically Modified Organism)』

最先端の科学技術を駆使して、新たな兵器を作り出すプロジェクト『パワー・オブ・ア・サイエンティフィック・ウェポン』

数々の格闘技を調査研究し、長所だけを統合して最強の格闘家を作り上げるプロジェクト『パワー・オブ・ザ・グラップラー』の3プロジェクトだ。

当時は東西大国の冷戦下に在り、最大の脅威は両国のトップが押すボタンだった。

政府は両国の内部(特に軍部)に諜報網を張り巡らせ、常時監視をしていた。それは有事以前に、戦争を起こそうとする輩そのものを葬り去る準備で、核を持たない国が巨大な戦力と対峙し、尚且つ生き抜く為にはやむを得ない選択だった。

戦争を放棄した国として、表立った方法ではなく、秘密裏に任務を遂行する『死神の大鎌』を作り出す事がパワー・オブ・プロジェクト最大の目的だったのだ。

しかしその後、冷戦構造はあえなく崩壊。ターゲットを失った各プロジェクトは、それぞれ迷走を始める。


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