ロ包 ロ孝
「裏法の事、お爺さまにはなんて言うの?」

「爺さんだってそうするだろうさ。仲間を守る為なんだから」

 勿論それについては重々考えた。だが正真正銘皆伝者が一子相伝として受け継がれて来たのは爺さんの代迄。

坂本家の秘術として俺が伝えて行く筈だった裏法によっても回避出来る難題が多々有る筈だ。それを伝えずに同僚のエージェントを危険に曝すのは、仲間を見殺しにするのも同じだろう。

俺は裏蠢声操躯法の宗家として、彼らに裏法を伝授する事を決めたのだ。

「おっほっ! では裏法ご指導の方、宜しくお願いいたします」

「解りました。ひと月程お時間頂きたいのですが、大丈夫ですか?」

 シンクタンクの面々は、声を潜めてごそごそと、何やら話し合っている。暫らくして、いかにも科学者然とした、見た目はかなり若そうな男性が言った。

「では、出来る限り最短でお願いします。その間に急を要する事になるやも知れませんが、その際は事態収拾を優先して下さい」

 栗原が耳打ちする。

「ねぇ坂本さん。あの人滅茶苦茶若くないすか?」

「多分な。相当切れそうだし、若きエリートといった所だろう」

 彼は眼鏡の奥から切れ長の目を光らせると聞いた。

「何か、不都合な点がございますか?」

「いえいえ、こちらの話です。すいません。
 彼の国の状況把握や作戦の骨組み作成等は、そちらにお願い出来ますか? 私は裏法の伝授を励行しますので」

「解りました。一両日中に作成します」

 かくして、音力の本意であった超極秘オペレーション、『コード無我』は動き出したのだ。


< 328 / 403 >

この作品をシェア

pagetop