ロ包 ロ孝
 結局全員が【玉女】(ギョクニョ)を修練する事になったが、あと10日しかない。急がなければ。


∴◇∴◇∴◇∴


「淳、渡航期日が決まったわ。3日後よ?」

 帰り支度を済ませた後、里美が早足でやって来て言う。

「おいおい、随分と急な話だな。【玉女】(ギョクニョ)の伝授もまだ全部終わってないんだぞ?」

「それがそうゆっくりもしていられないのよ」

 確かに、彼の国に渡る手段は全面的に音力へ任せた。だが【玉女】を操れるのは現在、新派の関ただひとりである。

「李万歳(リ・マンセー)が懇意にしている日本のマジシャンが居るんだけど、マギー伸子って知ってる?」

「ああ、あの化粧がやたら濃い人な」

「そう、その彼女が彼の国でショーをするから、スタッフとして侵入する計画だったんだけど……その日程が急遽繰り上がってしまって、もう行くしか無いのよ」

 里美はらしくない、大きな溜め息をついている

「そうだったか。でもあいつらが3日で段取りを飲み込めるかどうか、不安ではあるけどな」

「あら、それについては平気よ。あたしも同行するんだし」

 軽い調子で里美は言ったが、その事実は俺に取ってまさに『青天の霹靂』だった。

「なんだと? そんな事ひと言も聞いてないぞ? 里美1人にそんな危ない真似をさせられるかっ! 俺も行く」

「駄目よお、淳は音力の総監督なんだからぁ」

「それなら他のヤツをあっちに遣ればいい。もしどうしてもお前じゃなければいけないなら、絶対俺も行くからな」

 相変わらず気軽な面持ちを崩さず、これは何年も練り上げてきた計画だから危険は無いのだと言う里美。しかし万が一の事は往々にして起こるもの。

日本に残すとすれば栗原だ。


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