ロ包 ロ孝
 彼を説得する内に、その選択の正統性を確認した俺は、更に畳み掛ける。

「それにいいか? 考えてもみろ。俺達がみんな日本を離れたら、その間は誰が音力を取り仕切るんだ?」

「それは……そうっすけど……。でも暗殺って……一体誰を狙うんすか」

「海鮮民主主義人民共和国連邦の総書記、李 万歳だ」

「え、えぇぇえっ?」

  ガチャンッ

 余りの声の大きさに、花瓶が倒れてしまった。

「馬鹿、声を絞れ」

「すいません、でも一国の元首っすよ? そんな事したら国際問題になりますって!」

「それがそうも言ってられんのだ。いいか?」

 俺は音力の前身、パワー・オブ・プロジェクトからの流れと、戦争を放棄した日本だからこその暗殺であるとの説明をしなければならなかった。


───────


「あの、坂本さん……」

「なんだ……」

「……長いっすよ」

 大分掻い摘まんだつもりだったが、どうしたってはしょれない部分も有る。

「北さんのどんな説明より長かった!」

 結局俺がヴァシーラで里美から聞いた時のように、栗原も参ってしまっていた。しかし俺が暗殺に加担する正当性と、栗原がそれに手を染めるべきではない理由も付け加えなければならない。

「まだ終わってないぞ?」

「ひえっ、勘弁して下さいよお」

 逃げ出そうとした栗原の首根っこを掴まえて、椅子に座らせる。

「いいから聞け。それから諜報部員が日本征服計画のシナリオを発見してな。今それは次々に現実となっているんだ。
 シナリオの締め括りは、大陸間弾道ミサイルで日本を『ボンッ』だ。
 ……俺達が平和な日本を作る為にいくら頑張っても、国そのものが無くなってしまったら元も子もないだろう?」


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