ロ包 ロ孝
「何言ってるんだよ。渡辺だって、いつも坂本さんや栗原さんから目を掛けて戴けてるじゃないか。
 今だってすぐ助けて戴いたりしてさ。そっちこそ羨ましいよ!」

 彼には珍しく声を荒げている。でもあの遠藤がそんな風に感じていたとは、今まで思ってもみなかった。

栗原が敬称を嫌がったのと同じような事なのか。渡辺に対する俺のフランクな物言いと違い、遠藤にはそれなりの敬意を払って接して来たから、それが却ってよそよそしく思えていたのかも知れない。

「まぁまぁ、2人共。いいか? 花にはそれぞれの愛で方が有る。
 それは人だって同じ事だ。俺は皆を一様に信じているし、頼りにも思っているんだからな?
 その気持ちの重さは、どちらへ向けた物にも変わりない。だから君達にも思うところが有るだろが、ここはひとつ納めてくれないだろうか……ん?」

 ふと背中に視線を感じて振り返ると、こちらをジーっと見詰めている佐藤氏と目が合った。

「ああっ、すいません。申し訳ないっ! 
 ほらほらみんなもまず、ちゃんと手を動かしてくれよ?」

「はーい」


───────


 総書記を迎える為の段取りを完璧に整えなければならない為、俺達はマギー伸子の第一アシスタントを代役に立て、本番と寸分たがわぬリハーサルを行っている。

機材も大小道具関係も、もう微調整だけで事足りるようになったので、俺達は少し手持ち無沙汰になっていた。

その機を見て、新派のリーダーである関が行動を開始する。

「では坂本さん。我々は予定通りに」

「お願いします。くれぐれも身の安全を優先で」

「はい解りました。では」

 暗転した舞台袖で手短に言葉を交わすと、関達4人は闇に溶けていった。


< 341 / 403 >

この作品をシェア

pagetop