ロ包 ロ孝
「はい関さん。準備オッケーです」

「出来ればこれを振るう事なく、ケリを着けたいもんだな」

 割れにくく鋳造されたセラミックと、カーボンファイバーを合わせて作られた刀身を見ながら関が言う。これは金属探知機に反応しない為に作られた、苦肉の策だった。

「この刀、かなり強度が低いですもんね」

「それも有るがな。我々が発見されたり捕えられたりしたら、坂本さん達が無事で居られる訳はない」

「そ、そうだよ。失敗は許されないんだった」

 声を裏返しながら太田が言った言葉に、再び緊張が走る。

「とにかく敵との接触は避けるんだ。暗殺は二の次だ」

「解りました」

「よし、行くぞっ!」

「フゥゥゥゥ」

 彼らは【者】(シャ)を使い宮殿の塀に次々と飛び乗った。伊賀流忍法の走破術に依り、普通でも時速40kmで走り続ける事が出来る彼らは、目にも止まらぬ速さで塀の上を駆け抜ける。勿論物音ひとつ立てずにだ。

「あそこにひとまず身を潜めるぞ」

 宮殿内の中庭に作られた生け垣のふもとに4人が降り立った途端、彼らの頭上をサーチライトが過ぎて行く。

「危ない危ない。これでは建物の中には踏み込めませんね」

 秋山の言葉を腕で制して、関が周りを窺う。

「いや、必ず守りが甘い所が有る筈だ。衛星の映像を見てみよう」

 彼らは携帯の画面を食い入るようにして見た。

「あれ? 暗くて良く見えませんね」

 照度を目一杯上げても、ただホワイトアウトしてしまうばかり。

「これは?」

 サーモグラフィー画面に切り替えるが、解像度が低くて尚更解らない。

「これならどうだ」

 赤外線スコープ画面になってやっと、彼らに全体の状況が見えてきた。

「こりゃ凄い。コンサートか何かが始まるのか?」

 最早関の口からは冗談しか出なかった。


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