ロ包 ロ孝
 緑色に照らし出された城内には、明らかに武装兵だと解る人影がそこここに見えている。

「参ったな、まるで隙が無い」

「関さん。エントランスはどうです? 門と城壁周辺ばかりに人員が集まっていて、ここはポッカリ穴があいています」

「確かに……でもこれ、なんだか怪しくないか? 我々を誘っているかのようだ」

 日本で入手してきた情報と明らかに違うその状況は、関を普段以上に慎重にさせていた。

「まず俺が行って中を探って来るから【玄武】(ゲンブ)を頼む」

「はい、フゥゥゥウ」

「では行ってくる、フゥゥゥゥウウ」

 関は9倍力でエントランスの屋根を支える柱の陰に走り込む。走破術と合わせると、理論上は時速360kmのスピードが出せるが、この短距離ではその限りではない。しかし人の目には残像さえ残らない程のスピードだ。

「映像通り、敵の影は無いな」

 関は辺りに気を配りながら、地獄耳の【朱雀】(スザク)を使った。

「キィィィィイ」

 周波数を合わせて内部の様子を窺うと、かなり多数の話し声が聞こえてきた。

「中は人で一杯なのか?」

 カチャッ カシッ ガチャ

「銃器のぶつかり合う音だ」

 関は【闘】を送った。

『これはマズイ、相手は臨戦態勢だ。一旦撤収する、【玄武】を!』

 そして息を切らして戻って来た関を待ち、彼らは撤退行動に移る。

「何か待ち伏せされている感じだった。
 だが幸い、まだ敵には感付かれていない。帰りはもっと慎重に、素早く行動しよう」

 関達は9倍力でひとりずつ塀を越えると、宿舎へひた走った。


∴◇∴◇∴◇∴


 関達の帰りが遅いので気を揉んでいた俺達は、丁度夕食に呼ばれた所だった。

なんとか時間を引き延ばしてみたが彼らは帰って来ない。いよいよ間に合わないと観念した時に、ようやく関が姿を現した。


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