ロ包 ロ孝
 勿論本当に休んでいた訳ではないので休養充分とは行かないだろうが、彼らのふらつきようと憔悴具合はどうだ。雪山から救出された人のようで、まるで地に足が着いていない。

「疲れは……取れなかったみたいですね」

 可哀想だが食事の席に彼らが居ないと疑われ兼ねない。夕食会には同席して貰う。


───────


「最近どうですか? こっちの方は」

 俺は宮殿での首尾をパチンコになぞらえて探った。

「んん〜。どうもいけませんねぇ。店に行っても先客が多過ぎて、狙った台に座れないんです」

 先客? 向こうは関達を待ち構えていたという事か?

「それは新台入荷情報が漏れているとかですか」

 あの胸騒ぎはそれを予感しての物だったのか。

「いえ、解りません。最近は手持ちを全部使い果たしてスッカラカンばかりです。
 もう少し金の遣い方を考えなきゃいけませんね、はっははは」

 作戦の練り直しが必要だという意味合いか。関達に万策尽きた(=手持ちを使い果たした)と言われたら、俺達が束になって掛かっても宮殿は落とせまい。

やはり……マジックショーの最中に出来る隙を突く以外には無さそうだ。

 決行は明日か……。


───────


 また早朝から叩き起こされる覚悟で眠りに就いた俺達だったが、翌朝はいつまで経っても静かなままだった。

  コンコンッ

「ん? 来たか?」

 ドアを開けて入ってきたのは里美だった。

「おはよ、淳。あたしよ、ア・タ・シ。んん、チュッ」

 俺達は軽くフレンチキスをする。

「おはよう、里美」

 思えば里美と言葉を交わすのは凄く久し振りだった。

「今日1日はゆっくり出来そうよ?」

 緊急の打ち合わせだか視察だかの為に、今日のショーは取りやめる事になって、明日以降に延ばされたらしい。


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