ロ包 ロ孝
「明日以降? それは明後日か明々後日かも解らないって事かよ!
 全く、あちらの都合で振り回されるこっちは堪らんな!」

「仕方ないわよ。国家元首ともなれば、そうもノンビリばかりはしていられないでしょ?」

 俺は軽い気持ちで言ったのに、妙に里美が絡んできた。

「なんだよ里美、あっちの肩を持つ気か?」

「べ、別にそんな意味じゃないわよ! やぁねぇ」

 どうも里美の物言いが精彩を欠いている。

「まさか……言葉を勉強したり滞在したりしてる内に、すっかりこっち贔屓になっちまったんじゃないのかぁ?」

 そして冗談めかしに言った俺の言葉を、里美はピシャリと否定した。

「馬鹿ね違うわよ、何言ってんの! あ、お喋りしていたいんだけど、向こうの係官に呼ばれてるの。そろそろ行かなくちゃ」

 もう少し里美と触れ合って居られると思っていた俺は少々拍子抜けしたが、彼女の立場も考えて、快く送り出す事にした。

「忙しいんだな。でもあんまり無理はすんなよ?」

 そう声を掛けると彼女は、いつもの柔らかい表情になって手を振る。

「うん。じゃあまた後でネ」

 里美はそそくさと行ってしまったが、残された俺達は、空いた時間をどう過ごせばいいのだろう。

 ココンッ

 まだ用が有るのか? ドアならまだ開いているのに。

「開いてるよ?」

「失礼します、おはようございますぅ。ちょっとお聞きしたい事が有るんですが……」

 里美と入れ替わりに、勢い込んで大阪支部の4人が現れた。各々電卓のような物を持っている。リーダーの山本が目配せしながら質問を始めた。

「里美かと思ったら山本さん達でしたか。ええ、どうぞ」

「今回のギャラの件なんですが、正直どれ位頂けはるんですか?」

 ウロウロとせわしなく歩きながらそう聞いて来るので、俺は笑いを堪えるのに往生してしまった。


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