ロ包 ロ孝
「山崎、ひとついいか?」
『なぁに? 坂本さん』
「確認なんだが、これってお前以外には聞こえないんだったよな」
俺は遠隔到達活性共鳴発声の【闘】(トウ)を修得出来たら、或る事を実行しようと目論んでいた。
『聞こえないわよ? ……っていうか、【闘】を使って声を送る場合には、1人だけにしか伝えられないって習わなかった?』
そうだ。相手の頭蓋骨を直接震わすのだし、口腔内を特殊な形にして音波の指向性を高める訳だから、複数に伝えたかったとしても1人だけにしか送れないんだった。
「それならいいんだ。山崎。いや、さ、里美!」
『え? は、はい』
相手も急に名前を呼ばれて戸惑っているが……ええい! 言ってしまえ!
「俺と付き合ってくれっ!」
その瞬間。ガヤガヤとうるさかった街の騒音が、ピタリと止んだ気がした。
『え、ええっ? はいっ、勿論! 喜んで』
やった!
俺はガッツポーズを決めながら小踊りして喜んだ。しかし……。
『あ、あれ? あの、坂本さぁん……』
俺と付き合う上で、何か都合の悪い事にでも思い当たったんだろうか、しかし俺ももう後には引けない。動揺を悟られないよう、努めて軽い調子で聞き返した。
「ん? どうした?」
最初は戸惑いの色を見せていた里美の声だったが、今では可笑しくて仕方ないという感じの明るさで伝わって来る。
『ううん? でもなんか、周りの人にも聞かれちゃったみたい、ウフフフッ』
「なにっ! それは本当かっ?」
どうやらまた、極度の緊張から大声を張り上げたらしい。術の能力を超える結果となってしまった。
『なぁに? 坂本さん』
「確認なんだが、これってお前以外には聞こえないんだったよな」
俺は遠隔到達活性共鳴発声の【闘】(トウ)を修得出来たら、或る事を実行しようと目論んでいた。
『聞こえないわよ? ……っていうか、【闘】を使って声を送る場合には、1人だけにしか伝えられないって習わなかった?』
そうだ。相手の頭蓋骨を直接震わすのだし、口腔内を特殊な形にして音波の指向性を高める訳だから、複数に伝えたかったとしても1人だけにしか送れないんだった。
「それならいいんだ。山崎。いや、さ、里美!」
『え? は、はい』
相手も急に名前を呼ばれて戸惑っているが……ええい! 言ってしまえ!
「俺と付き合ってくれっ!」
その瞬間。ガヤガヤとうるさかった街の騒音が、ピタリと止んだ気がした。
『え、ええっ? はいっ、勿論! 喜んで』
やった!
俺はガッツポーズを決めながら小踊りして喜んだ。しかし……。
『あ、あれ? あの、坂本さぁん……』
俺と付き合う上で、何か都合の悪い事にでも思い当たったんだろうか、しかし俺ももう後には引けない。動揺を悟られないよう、努めて軽い調子で聞き返した。
「ん? どうした?」
最初は戸惑いの色を見せていた里美の声だったが、今では可笑しくて仕方ないという感じの明るさで伝わって来る。
『ううん? でもなんか、周りの人にも聞かれちゃったみたい、ウフフフッ』
「なにっ! それは本当かっ?」
どうやらまた、極度の緊張から大声を張り上げたらしい。術の能力を超える結果となってしまった。