ロ包 ロ孝
「あっははは! おかしかった。周りに居る人達が一斉にきょろきょろ辺りを見回すんだもん」

 さっきの出来事を楽しそうに喋って聞かせる彼女。その笑顔は、見ているこっち迄幸せを感じる程に輝いている。

「顔を見合わせて指差し合ってる人も居たのよ? フフフッ」

 コロコロと鈴を鳴らすようにして笑う身体が弾むのに連られて、彼女の豊満な胸も揺れている。

「坂本さん。あたしの胸になんか付いてる?」

 里美は自分の身体を見下ろしてチェックに余念がない。「揺れる胸を見ていた」なんて言える筈も無い俺は、胸元で光る宝石を見つけた。

「いや、洒落たチョーカーだな。と思って」

「ホントはあたしの胸を見てたんじゃないのぉ? でもいいのよ? 坂本さんなら」

「馬鹿、そんなんじゃない!」

 慌てて否定をしてみたものの、赤面したこの顔では多分説得力も今ひとつだろう。

「ウフフッ」

 俺の心を知ってか知らずか彼女はまたコロコロと笑った。


───────


 里美と居ると楽しいのだが、恥ずかしい思いをする事も多くなった。『クールマン』と呼ばれて一目置かれている俺なんか、見る影も無い。

しかしこれが本来の俺なのだ。そそっかしく、感情的で女好き。そんな俺を自然体のまま愛してくれる里美は、最高のパートナーだ。しかし……残念ながら習慣という物はなかなか変えられない。

「これでちゃんと坂本さんとお付き合い出来るのね? ……あたし幸せ」

 俺の腕を抱き、頬をすり寄せて来る里美に「人前であまりくっつくな」などと、心にも無い事をつい言ってしまう。


< 37 / 403 >

この作品をシェア

pagetop