ロ包 ロ孝
 返事が無いので振り返ると、彼女達は大きく遅れて走っている。いや最早歩いていると言っていい。

「大丈夫ですか山本さん。きついですか?」

 彼女達を待って岡崎が声を掛けた。

「はぁっ、はぁ。岡崎さん。大丈夫だと言いたい所ですけどぉ、これ以上は駄目みたいです」

『渡辺さぁん。あそこの林で休憩しましょう』

 【闘】に運ばれてきた岡崎の意見で、彼らは小休止を取ることにした。


───────


「木陰はあまりないけど、何もない平地よりはまだマシだな」

「足手まといになってしもてすいません。ご迷惑お掛けしますぅ」

 山本達は申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえいえそんな。レディーに気遣いもしないで、こちらこそ面目ない。
 山本さんは自分のタイプなんで、他の奴が駄目だと言っても休憩しましたよ」

 渡辺は山本のような色白の女性が好みらしい。

「やだぁ、そんな。うまい事言うて渡辺さん」

 すかさず岡崎が突っ込む。

「なぁに言ってるんですか、彼女達が遅れてるのもやっと気付いたクセに!」

「なんだよ岡崎ぃ、こういう極限状態に置かれた男女ってのは恋に落ち易いって、知らないのか?」

「渡辺さんは計算ずくで口説いてはるんですね、フフフ」

 渡辺はハッと口を押さえて岡崎を睨む。

「全く、お前がチャチャ入れるからだ」

「それにしても、さっきから遠藤さんは何してはるんですか?」

 さっきからずっと地面に耳を付けていた遠藤は、身体を起こして言った。

「周辺に異常がないか聞き耳を立てていたんです。敵には察知されてないようですが、念の為周りを見回って来ます」

 新派に入り、伊賀流忍法を会得した遠藤は、地面の音から半径300mの異常を知る事が出来る。

「遠藤さんもお疲れやのに、申し訳ありません」


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