ロ包 ロ孝
「はは、山本さん。あいつは一日中でも走ってられるんです。化け物並みのスタミナですから気遣いは無用ですよ、なぁ遠藤?」

 そう能天気に渡辺が問い掛けた。

遠藤は伊賀流走破術に依り、長時間に渡って走り続ける事が出来るのだ。

「お前からそう言われると不思議に腹が立つ! でも山本さん。私はこいつらより能力的に優ってますから大丈夫なんです」

「またまたそんな……すぅぐそうやって強がるんだから。お前も山本さんを狙ってるんじゃないのか?」

「別に強がっちゃいな……シッ! 何か聞こえる」

 すかさず渡辺が返す。

「喋ってるのはお前だろ?」「待てっ! 黙ってろ!」

 遠藤が発したあまりの語気の強さに、気圧された渡辺は押し黙った。

  ……タ……パ……パタ……

「ローターの音だ! 海の方から聞こえる」


∴◇∴◇∴◇∴


「坂本さん! 秋山が殺られました。そちらは変わり無いですか?」

「達っつぁんと山本さん達は先に海へ向かわせました。達っつぁんにはヘリと遭ったらメールするように言っておいたんですが……そうですか。秋山さんが……」

 メールなら電波から発信位置を特定する時間が短い為、傍受されたとしても敵に位置を把握される恐れが少ない。しかしメルまめではない渡辺の事だ。忘れている恐れも十分ある。俺は素早く遠藤にもメールして里美と対峙した。

「里美! お前があくまでもそちら側で居ると言うのなら、俺も徹底的に戦うしかないぞ?」

 しかし里美は俺の子供を身ごもっている。出来る事なら攻撃などしたくはない。

「駄目よ、淳。蠢声操躯法はあたし達には通じないのよ? 無駄死にする事になるわ」

 相手が音の特性を使ってくるなら、こちらも負けてはいられない。さっきの里美の話から、俺は勝機を見出だしていた。


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