ロ包 ロ孝
「この戦車10両を相手に、生身の人間2人が何をしようと言うの? それに……」

 里美は遥か遠くの空を指差して続けた。

「それにほら、貴方達の死に様をご覧になる為に、我らが総書記もはるばるいらっしゃったわ?」

 里美の示した方を見ると、その影は小さいが、確かにヘリが1機こちらに向かっている。

「え? ええっ? あのヘリは海の方から来てますよ? と、いう事は……坂本さん!」

 関にそう言われて、俺もやっと気が付いた。

「ああっ、里美っ! そんな嘘だろ……まさか……まさかっ!」

 里美はほくそ笑んで言う。

「そうよ淳。残念ながらそのまさかね。
 貴方達を待っている船も、そこへ運んでくれるヘリも有りはしないわ? あたしが手配する振りをしていただけだもの。
 観念なさい。もう袋のネズミよ?」

 メールを送って暫く経つが、遠藤からの返信は無い。

渡辺だけならまだしも、遠藤からもなしのつぶてというのは、渡辺達も秋山同様殺されてしまったという事なのか! 

俺は、怒りと絶望で震える身体を抑えられずにいた。

  バラバラバラララァァァ

 ヘリはもう、すぐそこ迄迫って来ている。この空と地上から挟み撃ちの状況でたった2人しか居ないのでは、到底太刀打ちなど出来っこない。

「万事休すか……」

『……とさん……坂本さん』

 全てを諦めかけたその時、俺の脳に湧き上がってきたのは、あの渡辺の声だった。

 達っつぁん。俺の力不足でとんだ事になってしまった。スマン、本当に申し訳ない。頼む、迷わず成仏してくれ。

俺は必死に祈った。注射は嫌いだが、幽霊はそれより何倍も苦手だったからだ。

『坂本さんっ! 自分ですよ、渡辺ですって!』

 どうやら【闘】で話し掛けてきているのは幻聴や霊の声ではない、確かに渡辺のようだ。


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