ロ包 ロ孝
 でも渡辺には、守らなければいけない仲間が居る。特にこのオペレーションが終わったら、休暇を貰って大阪に赴き、山本に告白する(渡辺の勝手な)予定なのだ。

ここで皆を(殊更山本だけは絶対に)危険な目に遭わす事は出来ない。渡辺は心を鬼にして【闘】を送る。

「そうか岡崎……でも泣いている暇も埋葬している余裕も無い! 何か形見になる小さい物でも持ってきてやれ」

 渡辺はそう指示すると皆を振り返り、自らを奮い起たせるかのように絞り出した。

「また他のヘリが来るかも知れない。後方に気を配れ。奴が遺品を回収したら自分達も宮殿へ急ぐぞ!」

「はい!」


∴◇∴◇∴◇∴


『その後は何事も無く、やっとここまで辿り着いたって訳です』

「さだ君が……」

『さたです。あいつがいつも……死ぬ迄、拘ってましたから』

「さた君な。面白い奴だったのに……達っつぁんも良く面倒みてたのにな。それは本当に残念だ。
 色々大変だったみたいだが、こっちも大変なんだ。
 俺と関さん2人だけになっちまった! 早く援護を頼む!」

 すると里美の【闘】が頭の中に割り込んできた。

『淳、総書記がおみえになったら下手な動きは出来ないわ? 逃げるんだったら今しか無いわよ?』

 話を遮られたのもあって、俺は声を荒げて返答した。

「ふざけるな! それに何度も言わすんじゃない。俺はお前らには絶対に屈しない」

 里美は愛しそうに、しかし寂しげに腹を撫でる。そして俺をキッと睨み付けながら言った。

『この子が大きくなった時、お父さんが死んでこの世に居ないと知ったら悲しむじゃない! この頑固エロオヤジ!』

 長らく聞いていなかった里美らしい物言いに、「ともすればマインドコントロールが解けかけているのでは」と淡い期待が湧き上がってきた。エロは余計だが……。


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