ロ包 ロ孝
 満面の笑みで俺の元に駆けて来る里美。


 逃げよう。


 2人の事を知っている人間が、誰も居ない場所迄。


 そして産まれてくる子供と3人で、ひっそりと暮らそう。


 罪は一生涯をかけ、懺悔して償えばいい。


 俺の里美。2人の子供はきっと驚く程可愛いよ?


 ほら、もう少し。


 俺の胸に飛び込んでおいで。


 あっ、危ない。転んでしまうよ?


 俺はよろけた里美に駆け寄って、彼女を抱きかかえた。

 ? 背中が濡れている。

「!! 血っ! 里美っ!」

「ああ……ホントあたしって駄目ねぇ……肝心な所でドジ踏んじゃって。撃たれちゃったぁ……」

 俺は慌てて銃創を押さえるが、あとからあとから血が溢れ出してくる。

「里美、しっかりしろ!」

 彼女は聖母のような微笑みを浮かべながら、腹をさすって言う。

「この子、淳に似てドジだと思うわぁ。でも顔はあたしに似て可愛いのよ?」

「そうだな、とっても可愛いだろうさ。でもドジは里美も一緒だろ」

 彼女の震える唇が、時を追う毎に血色を失っていく。

「何を言ってんのよっ。あたしのドジは淳のが伝染(ウツ)ったんでしょっ? でもそう、海袋の時は楽しかった。綿海の時はヒヤヒヤしたし……。凄い人生だったわぁ」

 微笑みながら遠くを見やって言う里美。

「里美! なに人生を語り始めてるんだ! 俺達、これからじゃないかぁっ」


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