ロ包 ロ孝
 巻物を手に入れ、術を解析し、修練をシステム化して設備を整える。

少なくとも1年、いや2年は掛かるだろう。しかしそれには多岐に渡る優秀な人材と、莫大な資本が不可欠だ。

「千葉は最古参なのかな」

「一番古い人はもう2年も修練してるらしいわよ? その人がまだ【第八声】(【列】レツ)迄しか体得していないのに自分は【第九声】(【在】ザイ)を操れると得意気に話していたもん」

「千葉も相当お喋りだな。修練前の里美にそんなべらべらと!」

 呆れて返した俺に、これは自分のお陰なんだとばかりに里美が付け足す。

「あたしに掛かればどんな男も『子猫ちゃん』みたいなものよ?」

 出た出た、里美の口癖。自信たっぷりだ。

「でも淳と居るとあたしが子猫ちゃんになっちゃうの……」

 そう言いながら手を猫のように曲げ、頬をスリスリして来る里美。

「さ、里美……」

 ヤバイ。か、可愛い……。いやいやイカン! 今は音力の問題が優先だ。


∴◇∴◇∴◇∴


 俺達は「3年から5年前に秘術が外部に漏れたのではないか」と仮定し、その時期に起こった事件や社会現象等を調べていた。


「でも淳。こんな膨大な資料、解析するだけで歳取っちゃうわよ!」

 図書館で新聞の閲覧をさせて貰おうとしたが、案内されたそこに有ったのは棚の端から端迄ギッシリとぶら下がった各紙だった。

それにこれを全て読めたとしても答えに辿り着く確証は何も無い。

「まずお爺さまに聞いたらどうかしら」

「そうか。それもそうだよな」

 早速祖父に電話をして、心当たりが無いか聞いてみる。


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