ロ包 ロ孝
 そうか。千葉から情報を聞き出す時も、里美は自分で彼を欲情させるように仕向けていたのか。もしや、本当に抱かれてしまってはいないだろうか。

俺の心の中には嫉妬と憤怒の炎がメラメラと燃え上がっていた。

「爺ちゃん。俺、確かめたい事が有るからまた後でな」

 祖父には悪いが、今は蠢声操躯法の事よりもそっちの方が大事だった。祖父との電話を切った後、俺は短縮ダイヤルの1番を押していた。ワンコールする間もなく里美は電話に出る。

「えらく早いな、里美。……ちょっと聞きたい事が有るんだが……」

『当たり前でしょ? 淳からの電話なんだからぁっ! それでなぁに? 今夜の予定を相談するの?』

 いつものように能天気な答えを返してくる彼女。そこには罪悪感の欠片も窺えなかった。やはり自分の身体迄使って情報を得ようなんて事、里美がする筈がないではないか。

しかし考えように依ってはそういう事を罪とも思わないとんでもない『悪女』だという可能性も有る。

「違うよ。お前の情報収集能力について、かな」

『ああ、偉かったでしょ? あたし淳の為に頑張ったんだからぁ』

「そうか。有難うな、それで……頑張り過ぎちゃいないか?」

 どうも奥歯に物が挟まったような物言いしか出来ないのがもどかしい。

『何それ。まぁ頑張ったけど、あたしに取ったら力半分ね』

 全力だったらどんな色仕掛けなんだ!

里美があんなことやこんなこと迄していたかと思うと居たたまれなくなり、俺はその勢いで電話を掛けた真意を話してしまっていた。


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