ロ包 ロ孝
「また時間が合えばゆっくり出来るから、もう少し我慢しててね?」

 里美が去り際に囁いていく。やっぱり読まれていたんだ!

恐るべし、山崎里美!


∴◇∴◇∴◇∴


 幾日かして突然の訃報が届いた。

なんとあの千葉が亡くなったのだ。

「本当ビックリ! つい何日か前迄メールして来てたのに……」

 情報を聞き出す為に千葉とメル友になっていた里美だったが、彼からはなかなか内部情報を聞き出せずにいた。

何回かそのメールのやり取りも見せて貰ったが、何かに付けて里美を口説いている嫌な内容だった。

「俺からすれば里美の身の危険を心配しなくて良くなったから、安心は安心なんだが……」

 頭の中で銀縁メガネの青白いヤサ男が、不気味に微笑んだ。彼にはそんな印象しか抱いていなかったのだ。

「ウフフ、有り難う。でも北田の線を辿れなくなってしまったのはちょっと残念ね」

「ああ。しかし突然だったな」

 千葉に敵対心を抱いてはいたが、当然死んで欲しいと迄は思ってもみなかった。人の生き死になんて、ホントに解らないものだ。

「あいつ、自分の自慢話はべらべら喋る癖に、いざ音力の内情となるとハグラかしてばかりで……でもまさか死んじゃうなんてね……」

「そうだな。でも、もしかしたら千葉自身、内情迄は良く知らなかったのかも知れないしな」

 音力からは「千葉の死に関しては一切感知していない」とのつれない返事。彼を良く知る共通の友人も居なかった事から、その原因は解らずじまいだった。

しかしまた本部から誰かが派遣されてくる筈だ。以前岩沢は言っていた。「この城北ブロックのトップで在り続ける事が、私の音力に於いての意義なんです」と。


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