ロ包 ロ孝
「なに? 小倉部長が?」

「いえ、津城部長です……だからぁ、主任がそう意地を張っていると会社全体の損失になるんです!」

 随分大層な話だ。しかし津城部長が? 開発部に迄俺達の事が知れ渡っているとは……。

「じゃ、そういう事で……」

 っておいおいっ!

今度は引き止める間もなく行ってしまった。


───────


 里美の情報収集能力も大した物だが、栗原の情報伝播力ももの凄かった。暫らくすると

「坂本くん」

「大谷専務! ご用でしたら私から伺いましたのに……」

「いやいや社長もご安心なさってた。山崎君を大事にするんだぞ?」

 承知しました。って……栗原の言っていた事は本当だったのか!

俺の事を直接知っている社内の人間は、言ってもそんなに大人数では無いだろう。なのにこれだけの反響が有るのは、相手が里美だからこその事だ。

それにしても里美の人脈って一体……。


∴◇∴◇∴◇∴


「なんだかみんなにおめでとうって言われっ放しだったわ? これで社内でも堂々と淳って呼べるわネ」

「それは駄目だ。公私のケジメはキチンと付けなさい」

「はぁあい」

 里美は些か不服そうだが、そこだけは譲れない。

「しかし結婚するって訳でもないのに、おめでたい会社だな」

「フフフ。でもあたしはこの会社、好きヨ? 淳とは比べ物にならないけど!」

「そうなのか? でも……里美は一体俺のどこがいいんだ?」

「う〜ん……どこがいいって? なんだろ、顔かしら。いやその目かしらね」

 里美が俺の前髪を直しながらじっと瞳を覗き込む。


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