ロ包 ロ孝
「まだあたしが音力を知らなかった頃……」

 そしてポツリポツリと話し始めた。


───────


 自分に自信が持てず、人間としての価値も見出だせなかったその頃の里美は、それこそどこの馬の骨とも解らない男と迄性交渉を重ねていた。

名も知らない男達が里美の容姿を褒めちぎり、お姫様のように扱ってくれる。里美が着衣を1枚はぎ取る度に歓喜し、例外なく驚嘆の声を上げる。そんな彼等と供にする時間が、何より自分を癒してくれると里美自身で頭から思い込んでいたのだ。

そんな時、ふとしたきっかけで俺と里美は一夜を供にする。

俺は里美の目を見て彼女の話を聞き、そして彼女の瞳を見つめながら事に及んだ。終えた後もいつまでも彼女の髪を撫で、お互い他愛の無い話をしていたという。里美の身体や顔以外の話をそんな場所でしたのは俺位のもので、里美はその時『本当の癒し』を感じたらしい。

「……そう、淳のそんな所にぞっこんなの」

 里美は頬を染めながら甘えた声を出している。

 そうか。俺のやり方も悪くは無かったんだ。

一般的に通用する方法は垣貫の方がうわ手でも、こと里美に関しては俺に適う者は居ないのだ。今迄抱えていた『おんなベタ』というコンプレックスを払拭出来たような気がして、かなり気分が良かった。

「でも、こんな汚れた女で……淳は……いいの?」

 里美は急に不安気な表情で俺を見上げてきた。

「汚れてるってどこがだ? 身体の汚れならシャワーを浴びれば綺麗になるだろう?」


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