ロ包 ロ孝
 しかし……合点が行かないのはやはり、音力の運営を行っている元の団体である。

俺達が加入しているのは城北ブロックだが、他に関東で3拠点、北海道から沖縄迄で38拠点を数える音力だ。やはり規模が大き過ぎる。余程の巨大企業でなければ、すぐ売り上げに貢献しないであろう音力を抱えておくのは困難だ。

やはり宗教か。しかしイカれたカルト教団でない限り、こんな術は必要ない筈だし、加えて音力には宗教色の片鱗も無い。

「垣貫はどう思う? 音力の裏組織」

「どうだろうな。怪しい所は今の段階では感じないんだが……」

 新しい情報も無かったので、その後俺達は下らない与太話をして別れた。垣貫にアドレスを教え直したので、何か動きが有れば今度は教えてくれるだろう。

でもこのまま全員が術を修得したとしたら、800人近い術者を育成する事になる。考えれば考える程、政府が噛んでいるとした方が自然な成り行きだ。

しかし音力が政府の特殊機関なのだとしたら、何を敵とみなし、誰を標的として狙っているのだろうか……。


∴◇∴◇∴◇∴


「ええっ? ま、まさか岩沢さんが?」

 いつものバーで報告会。里美が久々に新情報を、しかもにわかに信じ難い衝撃の事実を入手して来た。

彼女に依ると岩沢は、崖から転落してそのまま帰らぬ人になってしまったらしい。

「これで2人目じゃないか!」

「嫌な感じよね。でも……一体どうして、そんな場所に行ったのかしら」

 あの岩沢さんが亡くなったなんて、俺には全く信じられなかった。


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