ロ包 ロ孝
「術を実際に使ってみたかったんだろうか……それとも【前】(ゼン·全破壊)の修練を焦ってしまったんだろうか……」

「また原因不明ネ。不吉だわ」

 里美は音力内にアンテナを張り巡らせる為に、サークルのメンバー達とメールのやり取りをしている。

岩沢の訃報を知らせて来たのは東北支部のメンバーだが、どうやら今あの北田が支部に顔を出しているらしいのだ。

「丁度母の具合も心配だし、アタシ行ってみるわ」

 現在里美の母親は岩手に居るのだが、最近身体の調子が思わしくないとこぼしているらしい。

「お願い出来るか? でも余り無理して深入りしない様にな」

「うん。解った」

 人が2人も死んでいる一件だ。一抹の不安は有ったが他ならない里美の事だ。上手くやってくれるだろう。


∴◇∴◇∴◇∴


「淳! 久し振りぃっ!」

 電車から降り立った里美は、さも長らく会っていなかったようにはしゃいでいる。

そうは言ってもたかだか3日しか経ってないじゃないか。

「お帰り、里美。お疲れさま」

 最近俺は、言いたい事を飲み込む『術』が出来るようになった。お世辞やおべっかを言う『術』はまだ修得していないが……。

「お母さんはどうだった?」

「お陰様で。ちょっと寂しかっただけみたい」

「良かったじゃないか、大した事なくって」

「うん、有難う。それが聞いてよ、淳。
 工務店のオヤジも言ってたんだけど、北田は『超』が付くお喋りだったわ」

 そう、本来の目的は北田からの情報収集だった。

「前にもそんな話をしてたもんな。それで、何か目新しい事は有ったのか?」


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