ロ包 ロ孝
「それが……余りかんばしく無いのよ。オヤジに聞いた以上の事は無かったわ。あ、大事な事がひとつ有ったんだ」

 里美は手を打って大袈裟に頷いた。

「なんだなんだ? 組織の事か?」

「違うの。北田ってホモなのよ。アタシの色気が全く通じないから聞いてみたら、あっさり白状したの」

 大事な事がホモ?

……俺は少し拍子抜けしたが、考えてみればそうかも知れない。彼等は異性に対して何の興味も持たないだろうし、それで里美のお色気が通じないとなれば、せっかくの情報源から何も引き出せない事になってしまう。

動物操作活性共鳴発声の【在】で操る事が出来るのは単純な動作だけなので、術で自白させるのは不可能だからだ。

 ともあれ、北田が口の軽い男で良かった。

しかし、音力設立に最初の段階から携わっている彼からでさえ、新たな情報を得る事が出来ないとすると、そろそろ調査のやり方を立て直す時期に来ているのだろうか?


∴◇∴◇∴◇∴


 あれから俺達も修練を重ね、最終奥義の【前】(ゼン)を残すのみとなった。これからは祖父の所で学ばなければならない。勿論里美も一緒だ。

「仕事の都合で暫らくこちらに顔を出せないと思いますが、宜しくお願いします」

 城北ブロックの事務長に挨拶をする。この人も内情には明るくない。

「山崎さんと坂本さんは城北ブロックのNo2とNo3ですからネ。
 我々に取っては少々痛いですが、実生活の方が優先です。頑張って下さい」


< 73 / 403 >

この作品をシェア

pagetop