ロ包 ロ孝
 岩沢亡き後、No1は垣貫になった。

 スケジュールの都合上、音力で全く会わなくなった彼にも、一応蠢声操躯法での【前】(ゼン)修得を勧めてみたが、やはり仕事を休む訳にはいかないようだ。

「俺は俺で音力流【前】を習得して、免許皆伝を目指してみるよ」

「何か有ったらすぐ連絡してくれよ? 垣貫」

「ああ、お前もな」

 そして俺達は高倉家へと向かった。

「お爺さまぁ! お久し振りですぅぅ」

「おお、良く来たな。え〜っと……ぉお」

「里美ですっ! お爺さまったら、アタシの胸ばかり見てるから忘れちゃうのよ!」

「すまんすまん。でも里美さんもその格好は、サービス過剰じゃなかろうか……」

「お爺さまにはお世話になるので、ちょっと頑張ってみたんですけど?」

 ここに来る迄の間も、電車やバスの中でいやという程視線を浴びてきた。いや、正確には里美に向けられた視線なのだが。


───────


「お前、その格好は無いだろう、下着より露出度キツイぞ?」

「お爺さまが喜ぶと思って選んだんだけど……」

 そりゃエロじじいの事だ。「ムホムホ」言って喜ぶに違いない。しかしまた少し離れた所から男がこちらを見てニヤついている。

「お前がいやらしい目で見られるのは、いたたまれないんだよ」

 なんだか里美の価値を低く見られているようで嫌だったのだ。

「嬉しいっ! 淳って最高!」

 そう言って抱きついてくる里美だが、その格好を何とかしてからにして欲しい。


∴◇∴◇∴◇∴


 ……結局そうこうしている内に高倉の家へ辿り着いてしまったのだ。


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