ロ包 ロ孝
「淳からも怒られたんです。『俺の里美を他の男にジロジロ見られたく無い!』って」

 おいおい、脚色するな。『俺の里美』なんて誰が言った!

「メールが届いています」

 突然携帯が鳴った、垣貫だ。

「なになに?」

subject.経過報告

text.ブースでの修練を終え、これから自主修練に入る。
 多分岩沢さんは、その最中に不慮の事故に遭ったのだと思う。俺は転落等の危険が無いように、砂浜から海に向かって前を放ってみるつもりだ。
 あとひとつ、土産話も有る。ついに音力の裏に居ると思われる人間から接触が有った。そっちに帰ったらじっくり話すので、楽しみにしておいて欲しい。

垣貫


「あいつ、勿体ぶりやがって! 察するによっぽどの情報なんだな」

 しかし、これが生きている垣貫と最後に交わしたメールとなった。


───────


「爺ちゃん。宜しく頼む」

 奥義蠢声操躯法極意【前】(ゼン)の伝授が始まった。

「よし、まずは発声に依って体内の力を上げていく。そして息を細く吸いながら気を蓄める。最後にそれを解放するんじゃ。
 言葉で説明しても良く解らんじゃろうから、ひとつ放(ハナ)ってみる。しっかり観ておれ」

「おいおい爺ちゃん。こんな所で放ったりして平気なのか?」

 【前】は蠢声操駆法の極意だ。打撃の【皆】(カイ)や切断の【列】(レツ)でさえ、その凄まじい破壊力に驚かされたというのに。祖父はその【前】を放ってみると言うのだ。


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