ロ包 ロ孝
「垣貫さんは大変お気の毒でした。私もすごく残念です」
音力の事務長から哀悼の言葉を貰うが、俺は憤りを隠す事が出来ない。「お前らの所為で垣貫は死んだんだ!」俺の心には怒りの炎がメラメラと燃え盛っている。
術の修得を急がせた為か、何らかの秘密を知ってしまった末の口封じなのか。何にせよ、その死に音力が大きく関わっている事は間違いない。
事務長は確かに音力の内情については余り知らないし、恐らくその中での役割も大した事のない、所謂只の金庫番だ。
しかし俺からすれば、音力は友の命を奪った殺人者に他ならない。その組織に属する輩はみな等しく『友のカタキ』なのだ。
「坂本さん。お具合でも悪くなされましたか? お顔色があまり、よろしくないようですが……」
彼は気遣いを見せてくれているが、そんな事にほだされてはいけない。俺はあくまでも端的に返した。
「平気です。で、今日は特別な事でも?」
事務長から「普段の修練スケジュール以外に音力へ来られないか」との打診を受けて今日ここに来た。いよいよ裏組織との接触があるに違いない。
「ええ。ご存じの通り音力は、上位の者が下位の者を修練するシステムになっています。
坂本さんは【第九声】迄を修得なさったので、免許皆伝の【第十声】を修得する為にはその上の術者が必要になります。しかし生憎この音力には、その段階に達した術者、つまり『免許皆伝者』が居ないのです」
「はぁ? 免許皆伝者が居ないって、一体どういう事ですか? それで良く組織としての運営が勤まりますね」
会話がとげとげしくなってしまうのも怒りの表れだ。
「申し訳ありません。しかしこの音力は、前組織から数えて2年数ヵ月しか経っていない、まだまだ若輩者の組織なんです」
かなりばつが悪そうに彼は言う。暑くもないのに頻りに汗を拭っている。しかし、俺達が予想していた通りの発足時期だった。
音力の事務長から哀悼の言葉を貰うが、俺は憤りを隠す事が出来ない。「お前らの所為で垣貫は死んだんだ!」俺の心には怒りの炎がメラメラと燃え盛っている。
術の修得を急がせた為か、何らかの秘密を知ってしまった末の口封じなのか。何にせよ、その死に音力が大きく関わっている事は間違いない。
事務長は確かに音力の内情については余り知らないし、恐らくその中での役割も大した事のない、所謂只の金庫番だ。
しかし俺からすれば、音力は友の命を奪った殺人者に他ならない。その組織に属する輩はみな等しく『友のカタキ』なのだ。
「坂本さん。お具合でも悪くなされましたか? お顔色があまり、よろしくないようですが……」
彼は気遣いを見せてくれているが、そんな事にほだされてはいけない。俺はあくまでも端的に返した。
「平気です。で、今日は特別な事でも?」
事務長から「普段の修練スケジュール以外に音力へ来られないか」との打診を受けて今日ここに来た。いよいよ裏組織との接触があるに違いない。
「ええ。ご存じの通り音力は、上位の者が下位の者を修練するシステムになっています。
坂本さんは【第九声】迄を修得なさったので、免許皆伝の【第十声】を修得する為にはその上の術者が必要になります。しかし生憎この音力には、その段階に達した術者、つまり『免許皆伝者』が居ないのです」
「はぁ? 免許皆伝者が居ないって、一体どういう事ですか? それで良く組織としての運営が勤まりますね」
会話がとげとげしくなってしまうのも怒りの表れだ。
「申し訳ありません。しかしこの音力は、前組織から数えて2年数ヵ月しか経っていない、まだまだ若輩者の組織なんです」
かなりばつが悪そうに彼は言う。暑くもないのに頻りに汗を拭っている。しかし、俺達が予想していた通りの発足時期だった。