ロ包 ロ孝
「暫らくここでお待ち下さい」
事務長はそう言うと部屋を出て行った。
「垣貫もついこの間迄、ここで修練に励んでいたんだ」
何の音もしない暗闇でそう呟く。自然と涙が溢れて頬を伝い落ちる。すると館内に幾つかの白熱灯が点いた。
「お待たせ致しました。音力の根岸と申します」
急に声を掛けられた俺は、顔を慌てて袖で拭って声の方へ向き直った。その主は細身の紳士で、白髪混じりの髪の毛は年令を感じさせるが、声の雰囲気から察するに俺とさして変わらないようだ。
「坂本です。初対面から失礼ですが、垣貫の死は音力と関係が有ると思うんです。根岸さんは何かご存じ有りませんか?」
唐突かとも思ったが、俺は沸き上がってくる怒りの衝動をどうする事も出来なかったのだ。
「いえ、坂本さんのおっしゃるのもごもっともです。千葉の件、岩沢の件に加えて垣貫さんがあのような事になり、うちと致しましても放置している訳には行かなくなりました」
「やはり千葉さんの死も、音力と無関係では無かったんですね?」
「はい。事が事なので箝口令を引き様子を見ていました」
そう事もなげに認められると逆に冷めてしまい、俺は彼の話を冷静に聞けるようになっていた。
「我々は調査チームを結成し、千葉の件から徹底的に調べ直しました。……座りましょうか」
椅子へと促す根岸に勧められるまま腰掛けると、彼は話を続ける。
「まず3人の共通点として挙げられるのは、健康には何の問題も無かった事。【第十声】を修練中であった事。ブースでの修練を終え、自主修練期間中であった事等です。
各々の現場で集められた情報を加えて解析してみると、フルパワーで【十声】を放った後、何らかの事故に巻き込まれたのだという推測が立ちました」
事務長はそう言うと部屋を出て行った。
「垣貫もついこの間迄、ここで修練に励んでいたんだ」
何の音もしない暗闇でそう呟く。自然と涙が溢れて頬を伝い落ちる。すると館内に幾つかの白熱灯が点いた。
「お待たせ致しました。音力の根岸と申します」
急に声を掛けられた俺は、顔を慌てて袖で拭って声の方へ向き直った。その主は細身の紳士で、白髪混じりの髪の毛は年令を感じさせるが、声の雰囲気から察するに俺とさして変わらないようだ。
「坂本です。初対面から失礼ですが、垣貫の死は音力と関係が有ると思うんです。根岸さんは何かご存じ有りませんか?」
唐突かとも思ったが、俺は沸き上がってくる怒りの衝動をどうする事も出来なかったのだ。
「いえ、坂本さんのおっしゃるのもごもっともです。千葉の件、岩沢の件に加えて垣貫さんがあのような事になり、うちと致しましても放置している訳には行かなくなりました」
「やはり千葉さんの死も、音力と無関係では無かったんですね?」
「はい。事が事なので箝口令を引き様子を見ていました」
そう事もなげに認められると逆に冷めてしまい、俺は彼の話を冷静に聞けるようになっていた。
「我々は調査チームを結成し、千葉の件から徹底的に調べ直しました。……座りましょうか」
椅子へと促す根岸に勧められるまま腰掛けると、彼は話を続ける。
「まず3人の共通点として挙げられるのは、健康には何の問題も無かった事。【第十声】を修練中であった事。ブースでの修練を終え、自主修練期間中であった事等です。
各々の現場で集められた情報を加えて解析してみると、フルパワーで【十声】を放った後、何らかの事故に巻き込まれたのだという推測が立ちました」