ロ包 ロ孝
「里美。そんな興味本位だけで勤まる仕事じゃない。案件に依っては死ぬ危険だって有るんだぞ?」

『そんなの解ってるわよ! 淳は慎重過ぎて優柔不断な所が有るから、あたしがきっかけを作ってあげないと踏み込めないでしょ?』

 そうか。里美と一緒ならお互いを信頼出来るし、心が深く通じ合っているから咄嗟の連携もスムーズだ。そういった面ではいい仕事が出来る条件は揃っている。

それに冗談じゃない。確かに俺は用意周到な方だが、断じて優柔不断ではない。即断を下すべき局面ではすべからくそうしてきた。これからも勿論そうだ。

『お爺さまも特別講師として音力に参加なさるそうだし、更なる術の研鑽も可能なのよ』

 なんだと? いいのか爺ちゃん。高倉家の秘術が人の手に渡っても!

しかしこのまま黙って見過ごして、音力式の【前】を続けさせれば、新たな死者が出るのは目に見えている。祖父はそれが心苦しかったのかも知れない。

「でも、なんか……すっかり俺だけ蚊帳の外じゃないか」

 今俺は、疎外感と焦りを感じて音力と契約する道を模索し始めている。

『ごめんなさい。てっきり淳も乗って来ると思ったから……』

「俺はお前との幸せを守っていたかったんだ。お前を危険な目に遭わせたくないんだよ」

『有り難う。でも淳と一緒なら危険な事は無いわ。だって淳があたしを守ってくれるもんっ』

「勿論守るとも! 俺が里美の側で、全ての危険を遠避ける」

 俺は勢い込んで叫んだが……またすっかり里美のペースにはめられているようだ。

『お爺さまとも相談したらいいのよ、ネ?』

「解った。そうしてみるよ」

 俺は里美との電話を切ると、早速祖父に掛け直した。


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