ロ包 ロ孝
彼に昼食時は『トップオブザマウンテン※』へ来るようにと伝えた。
「解りました。じゃあ俺は外回りが有りますんで、また昼に」
姿見で身仕度を整えて、そそくさと出て行く栗原の後ろ姿を見送りながら「これは彼に取って良い事なのか否か……」と、自らの答えも決まらないまま栗原を巻き込もうとしている自分に問い掛ける。
「やほーっ、じゅーん!」
里美が手招きしている。彼女のひと声で疑問はうやむやになり、俺は彼女に駆け寄った。そして声を殺して耳打ちする。
「社内ではケジメをきちんと付けろと言ってるだろう!」
「え~? だってもう公認の仲でしょ?」
里美は悪びれもせず身体を擦り寄せてくる。
「仕事は仕事、プライベートはまた別! ほら離れて離れて!」
里美は頬を膨らませて俺から渋々離れた。仕事上での物覚えはすこぶる良い癖に、こういう事は何度言っても解らないから困る。
「ホンっトに淳はお堅いんだからっ! あ、いいニュースが有るんだけど……」
エージェントとしての仕事は有事の際に起こってくる物なので、はっきり言って普段は何もする事が無い。
そこでこの会社に『契約社員』として残れるよう、社の上層部と話を付けて来たというのだ。
「エージェントの仕事が入った時は?」
案件に依っては数日掛かる物も有る筈だ。いきなり何日も責任者が抜けてしまっては、プロジェクトが成立しない。
「あたしはまず配置換えで他の部署に移るわ。淳はこのままで居ればいいの。……でも、課長に昇進だって!」
「なんだ? 藪から棒に!」
※ 社員食堂は地下1階に有るが『山乃上給食』という会社が入っているので、社員の間では『トップオブザマウンテン』と呼ばれている。
「解りました。じゃあ俺は外回りが有りますんで、また昼に」
姿見で身仕度を整えて、そそくさと出て行く栗原の後ろ姿を見送りながら「これは彼に取って良い事なのか否か……」と、自らの答えも決まらないまま栗原を巻き込もうとしている自分に問い掛ける。
「やほーっ、じゅーん!」
里美が手招きしている。彼女のひと声で疑問はうやむやになり、俺は彼女に駆け寄った。そして声を殺して耳打ちする。
「社内ではケジメをきちんと付けろと言ってるだろう!」
「え~? だってもう公認の仲でしょ?」
里美は悪びれもせず身体を擦り寄せてくる。
「仕事は仕事、プライベートはまた別! ほら離れて離れて!」
里美は頬を膨らませて俺から渋々離れた。仕事上での物覚えはすこぶる良い癖に、こういう事は何度言っても解らないから困る。
「ホンっトに淳はお堅いんだからっ! あ、いいニュースが有るんだけど……」
エージェントとしての仕事は有事の際に起こってくる物なので、はっきり言って普段は何もする事が無い。
そこでこの会社に『契約社員』として残れるよう、社の上層部と話を付けて来たというのだ。
「エージェントの仕事が入った時は?」
案件に依っては数日掛かる物も有る筈だ。いきなり何日も責任者が抜けてしまっては、プロジェクトが成立しない。
「あたしはまず配置換えで他の部署に移るわ。淳はこのままで居ればいいの。……でも、課長に昇進だって!」
「なんだ? 藪から棒に!」
※ 社員食堂は地下1階に有るが『山乃上給食』という会社が入っているので、社員の間では『トップオブザマウンテン』と呼ばれている。