ロ包 ロ孝
 今迄空席となっていたそのポストに座らされる事となった。


∴◇∴◇∴◇∴


「課長! おめでとうございます」

「もう聞き付けて来たのか。それで俺と山崎が契約社員になる話は聞いたのか?」

 トップオブザマウンテンの名物定食『春巻げ丼定食』を食べながら栗原と話している。

「え? それは寝耳に水ですねぇ」

「まぁ、それも含めて話すよ。朝言ってた大事な話っていうのはな……」


───────


 粗方話し終えて気が付くと、周りには誰も居なくなっていた。食堂のおばちゃんがせわしなくテーブルを拭き上げている。

「ありゃ、もうこんな時間だったか。続きはまた夜にな」

「は……い……解りました」

 話に興が乗ってつい昼休みを過ぎてしまったが、栗原は魂を抜かれたかのような顔をしている。

やはりいきなり全部を把握しろというのは酷だろう。今迄蠢声操躯法を実際に経験してきた俺でさえ、気持ちの置き場所に困る位なのだから、解らなくもない。


∴◇∴◇∴◇∴


 その夜。

「山崎さぁん」

「こんばんは栗原くん。相変わらず可愛いわね」

 里美は猫にするように栗原の喉を撫でる。

「最近ここも飽きてきちゃった。客層も悪くなった気がするし」

 里美にごろにゃんしている栗原が気になるが、ここは「微動だにせず」で行こう。

「淳。心中穏やかじゃ無いでしょ」

 当たり前だ! 栗原の奴、顔をお前の胸にこすってやがるぞ?

栗原はまるで猫のように目を細めて里美になついている。

「ヨシヨシ、淳が恐い顔してるからそこら辺でやめときなさい」

「ぅにゃ? はっ!」

 俺の視線に気付いた栗原が我に返った。


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