ロ包 ロ孝
「ダッ」

「ウワァァァ〜ッ!」

 自分の手を代わる代わる見ていた男は、その姿のままワイヤーアクションのように飛ばされた。3m程宙を舞って壁に叩き付けられた男は、気を失って崩れ落ちる。

「淳、今のは【皆】(カイ)じゃなくて【空陳】(クウチン)ね? あんなに小さく発したのに、あれだけ飛ばしちゃうなんてさすがだニャあん」

 今度は里美が俺の懐にごろにゃんして来た。どうだ、惚れ直しただろう!

「栗原君。君は俺のペットのペットという訳だ。ハハハ……ん?」

 また昼間の脱け殻顔に戻ってしまい、倒れた男の方をボンヤリ見ている栗原。

「あぁぁぁ、やっぱり本当だったんだぁ……でも俺、担がれたんだと思ってたのに……」

 ブツブツ独りごちながらオシボリをいじっている。

「くぅりはぁらくん♪ ……パッ」

 里美が術で栗原のオシボリを弾き飛ばした。

「ひゃ! なんすか! 山崎さん、何なんすかっ!」

「【空陳弱】か。俺はそこ迄力を絞れないからな、里美も凄いよ」

「淳に誉めて貰うの嬉しいニャんっ!」

 そう言って人目もはばからず抱きついて来る里美。

  ピーポーピーポー ウウ〜ゥゥゥ

 店の通報でパトカーと救急車が到着したようだ。

「何か有ったのかな」

「さぁ……ケンカみたいよ?」

 面倒な事にならないようにと、そ知らぬ振りで店を後にする。

「おい栗原君……栗原くんっ!」

 俺の大声にビクッと身体を震わせこちらに向き直る。両手はまだ胸の前でオシボリをいじる形のままだった。

「フフフ。その手、いつ迄そうしているつもり?」

 彼は里美に指摘されてようやく手を下ろした。

「あれが、あれが春雪ナントカ法っすか……凄いです……ホントだったなんて……」


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