君の虚実に恋してる


「ところで瑛史、詩出来た?」

「あー…英訳はしてない」

「…やっぱりな」

かっつ先輩がため息をついた。
部長は苦々しい顔をした。

「なんでいきなり英訳するなんて言ったんだ?今までは英訳はしなかっただろ」

そう言われてみれば部長が英訳をしようとしてるのを始めてみた気がする。

「かっつにはわかんねーよ」

部長がぽつりと呟いた。
空気が凍りついた。

「だろうな」

かっつ先輩が冷たく言った。
前々からこの二人は仲が良いのか悪いのかわたしにはわからない。
いつもの風景だけど、今日はなんとなく部長に覇気がないような…。


「ま、まあまあ。険悪にならないで。ね?」

「気をつかわせて、申し訳ないな」

曖昧に微笑まれる。
かっつ先輩はさらっと流しているようだが、部長は不機嫌そう。

いつもならもっとあっさり流すのに…。
何かあるのかな?

少しの沈黙があってそれを遮るように携帯が鳴った。
かっつ先輩の携帯だった。

「もしもし?…ああ、わかった。すぐ行くよ」

そい言いながら手を振ってまた部室から出て行った。

結局入ってから1、2分で出てっちゃった。

委員会のことかな。
生徒会長は忙しい生き物だ。って言ってたし。大変だなあ。


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