君の虚実に恋してる


「でもエノキの気持ちはすごい嬉しい。ありがとう」

「全く気づかなかったくせに」

「それは…ごめん」

部長が薄く笑った。
部長は、そうやって笑ってればいいの。

「こういうこと言うの卑怯だけど、エノキが返事延ばして欲しいって言ってくれて良かった」

それは、どういう意味?

「でも、期待は出来ないかも」

「…知ってるもん。部長ヘタレだし」

「…うん」

そんなに切なそうな顔で頷かないで。
「ありがとう」なんて言わないで。



「部長、わたしもう帰ります」

このまま2人で部室にいたらわたしがいたたまれない。
それに余計部長を困らせてしまうかもしれない。

なにより、今わたしが泣きそうで。



「うん。気をつけて」

それでも笑顔で見送ってくれる部長はやっぱり良い人だ。


< 15 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop