君の虚実に恋してる
「でもエノキの気持ちはすごい嬉しい。ありがとう」
「全く気づかなかったくせに」
「それは…ごめん」
部長が薄く笑った。
部長は、そうやって笑ってればいいの。
「こういうこと言うの卑怯だけど、エノキが返事延ばして欲しいって言ってくれて良かった」
それは、どういう意味?
「でも、期待は出来ないかも」
「…知ってるもん。部長ヘタレだし」
「…うん」
そんなに切なそうな顔で頷かないで。
「ありがとう」なんて言わないで。
「部長、わたしもう帰ります」
このまま2人で部室にいたらわたしがいたたまれない。
それに余計部長を困らせてしまうかもしれない。
なにより、今わたしが泣きそうで。
「うん。気をつけて」
それでも笑顔で見送ってくれる部長はやっぱり良い人だ。