君の虚実に恋してる
猫かぶり
教室に入ると部長バンドのベースひろゆちがいた。
「おはよ、ひろゆち」
「あ~エノ、ちわっす」
ひろゆちはコーギーに似てる。
茶目っ気たっぷりでしっぽを振っているような愛嬌がある。
しかも空気読めるいい友人だ。
実は部長のことも相談していた。
「ねえ今日部活出る?」
「あーバイトだ。わり」
「えー…部長と2人だったらどうしよ」
「かっつさんいるって!てか部長だって良い人だし大丈夫だしね?」
「そうかなあ」
部長はまだ真由さんとかっつ先輩のことについて聞いてないのかな?
一週間何もしてないとか…。
あ、ありえそう…。
情けない部長を思うとなんとも言えない。
早く放課後になればいいのに。
「エーノー!そういやかっつさんと帰ってまじ?」
「あー…一応まじだけど大して話もしなかったなあ」
「なんでエノとは帰って俺とは帰ってくれねえんだろう…うう」
「だってひろゆち騒がしいもん」
「だってかっつさんミステリアスでかっけーし」
「あ、それはわかる!何考えてるかわかんないからかなあ。昨日知り合いに写真見せたら性格悪そうとか言われたし、不思議すぎる」
笑うわたしに対して、ひろゆちがピタッと止まる。
「性格は…褒められるもんじゃねえと思うけど」
今度はわたしが止まった。
「え…?」
「いつもライブ帰り女の子いるし、一時期5人くらい彼女いた~みてーな…」
「うそ!」
「や、イケメンだからそういうヒワイな感じに見えちゃうだけかも」
あんだけ美形なら知らず知らずに嫉妬しちまうし、と付け足す。
それにはわたしも納得。
キレーな顔立ちだもんなあ。
「いやでもちょっとイメージ変わる…女の子とかあんま興味なさそうに見えてた」
「いや女に興味ない男なんていねえ」
じゃあ逆に女にだらしないのかな。
しっかりしてそうなのに。
わたしって意外とかっつ先輩のこと知らないなあ。