君の虚実に恋してる


告白したのは一週間前の今日。
部室で漫画を読むわたしと楽譜に向かう部長が二人きりだった時。


「ん~んん~ん……違うな」

「あ、今のフレーズ好きです」

「え、本当?んじゃ採用しよっと」

「そんな簡単に決めていいんですか?」

「エノキ、俺と歌のセンス一緒だし、アレンジしたら格好いい!多分」

へらっと笑う部長の口元から八重歯が覗いた。

きゅん…

馬鹿の一つ覚えみたいに条件反射で八重歯を見るとときめいてしまう。




「歌詞は誰担当ですか?」

「実はもう歌詞決まってんの!珍しいだろ~」

部長は満足そうに笑った。

「もしかして部長が書いたんですか?」

「YES、エーシ、頑張りました!」

おおー!とかなんとか言いながらぱちぱちぱちと二人で小さな拍手をする。

こんなやり取りがわたしは楽しかった。


この時は告白するなんて考えてもみなかったけど。


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