オルゴール
麻衣子だ。
麻衣子が入ってきた。
麻衣子の目は少し赤くなっていた。
「愛華。」
そうつぶやくと愛華の前で頭を下げた。
「ごめん、アタシ勘違いしてた。何もかも。由希から聞いたんだ、愛華は拓君しか見てない、オルゴールも拓君から貰ったものだって・・・・・ほんとゴメン・・・」
麻衣子はボロボロと涙を流しながら愛華に何回も何回も謝った。
「麻衣子、そんなに謝らなくていいよ。勘違いさせたアタシにも責任はある。ごめん。」
愛華の言葉を聞いて、麻衣子は頭を上げた。
そして、愛華に「手、出して。」と言った。
愛華は言われたとおり手を出した。
麻衣子はその手の中にあるものを入れた。
手の中を開いてみるとオルゴールが入っていた。
「返すよ、オルゴール。勝手に取ってごめん。」
「いいよ。見つかってほんとに良かった・・・・・・」
愛華は見つかった事に安心して、なぜだか泣けてきた。
ポツ、ポツと涙が落ちていく。
「アタシ、これ大事にしてなきゃね。」
ぎゅっとオルゴールを握り締めて固く誓った。
きっと、こんな事がなければ愛華・・・アタシはこんなにオルゴールを大事にしてなかったよ。
それを気付かせてくれた麻衣子にお礼を言いたい。
でも、言ったとしても麻衣子は「アタシはお礼を言われるような事はしてない。」って言うと思うから、この気持ちは胸の内にしまっておくね。
長かった修学旅行も今日で終わり。
アタシにとって修学旅行は良い経験だった。
修学旅行と言うのがあってよかった。
何度も何度もそう思う。
このオルゴールはきっと拓とつながっているものなんだ、そう思う。
今でも、きっと君とつながっているそう信じたい。
今、拓は何をしている?
幸せな家庭を築いてる?
どんな生き方をしていても、拓が幸せならそれでアタシも幸せです。
絶対に、絶対に幸せに生きてください。
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