オルゴール
アタシが素っ気なくに自己紹介することにも何にもなかったかのような顔をして聞いてきた。
「あんた、さっき泣いてたよね??」
しつこい・・・・
「ちょっとね。」
この尚稀って人敏感だ。
「ま、元気だせって!」
にこりとしてアタシの背中をバンバンとたたいた。
「うん。」
なぜだかこいつを見てたら自然に笑顔がこぼれた。
なんか、この感じ前にもあったような・・・・・・
ふと拓を思い出した。
そうだ、拓とドコとなく似ているような気がした。
この、皆を幸せにする笑顔にさせるこの雰囲気・・・・・・・そっくりだ。
「おい、聞いてる?」
愛華は我に返った。
違う。そう違う。
似ていても拓じゃない。
拓は拓だ。
心の中で何度も唱えた。
「ごめん。聞いてなかった。色々考え事してたらさぁ~」
「も、ちゃんと聞けって。だからさ・・・・・」
それから、先生が来るまで尚稀としゃべった。
しゃべってる最中、やっぱり思った。
似てる。
ちょっとした仕草とか笑い方とか・・・・
もう、何もかも似てるように見えてきてしまう。
入学式の最中も先生の話なんか全然耳に入ってない。
愛華はずーッとただ、ただボーっとしていた。
なんか、何にもやる気にならないんだ。
「愛華~?」
後ろから由希に呼ばれた。
突然呼ばれたのでびっくりした。
「何?」
「もう、帰るよ。今日は午前中だけだもんね。」
鞄を持って由希は言った。
「あ、うん。今行く。」
愛華は急いで鞄を取りに自分の席に行った。
鞄を持って由希のところに行こうとした。
向かう途中、尚稀と目が合った。
「じゃ。」
愛華はそう言って由希の所まで走った。
「ばいばい。」
尚稀がそう言った。
愛華は手を振った。
なぜだか拓に手を振っている気分になった。
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