夏の終わりに
「楽しい夏だったよ」

と、園田(そのだ)は先週、
愛を交わした後の少し淋しいような寛ぎの中で、
とても静かに言った。

その口調の静けさゆえに冷然とした事実が、
見えない壁のように突然出現した。


「夏の間だけ」

と、一番最初に彼は言った。

「家族が別荘から戻って来るまで、
僕はきみのものだ」


その後はどうなるの、
とクミはそのとき訊きそびれた。

オードブルが出始めたときに、
デザートを気にするような感じがしたからだ。

少なくともその時はそんなふうに思ったのだ。
< 2 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop