『縛』
こんな扉一枚で、
声が聞こえないなんて、
あるんだろうか・・・?


耳を澄まして、
中の様子を伺う。


が・・・


「サラ、盗み聞きは
よくないな。」

扉が開いて、
お兄ちゃんが立っていた。



盗み聞きって・・・


人聞きの悪い。


いや、まさにそんな感じ
だったけど・・・


言い訳しても、
怒られるのは、
目に見えていて。


「ごめんなさい・・・」

素直に謝った。


「随分事なかれ主義
なんだな。サラ。」

ソファの背に、のしかかる様に
こちらをみていた志央が
不満気にいう。



・・・志央の心配なんか


するんじゃなかったよ。



「サラ、帰るぞ。
久々なんだから、
せめて、下まで見送れ。」

「え?あ・・・うん。」


お兄ちゃんの台詞に驚いた。

絶対、一緒に連れて帰るって
言うと思ってたから、
耳を疑った。



「そういう事だ。志央。
俺がいいたい事は
それだけだ。」

お兄ちゃんは、
そういいすてると、
私の肩を抱いて
部屋を連れ出した。


何を話してたんだろう?


口を開きかけた瞬間、
言葉を絶たれた。






< 106 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop